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大阪高等裁判所 昭和60年(行コ)58号 判決

主文

本件控訴をいずれも棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

第一  当事者の求める裁判

一  控訴人ら

1  原判決を取消す。

2  被控訴人らの請求を棄却する。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

二  被控訴人ら

主文同旨。

第二  当事者の主張

次のとおり付加、変更するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

一  控訴人らの当審での主張

1  原判決摘示請求原因三の事実に関する自白の撤回について

(一) 本件工事は、当時の京都市建設局建設企画室北部開発課長太田武之がその権限と判断において着工命令を出して着工させたものである。本件のような工事の着手及び一時中止命令に関する事項は、元来担当課長である訴外太田の専決事項である(局長等専決規程第三条参照)。したがって、控訴人らは訴外太田のした右工事着手命令には何ら関与しておらず、本件工事をさせたことはない。

(二) 右の点につき、控訴人らの原審訴訟代理人の納富弁護士が原審第一回口頭弁論期日において、控訴人らが本件工事をさせたとの被控訴人主張事実を認めたのは、真実に反するものである。

右の自白は、納富弁護士が、控訴人らから事情聴取しないまま、錯誤によりなしたものであり、それは、控訴人らの真

意に反するものである。

したがって、控訴人らが原審第七回口頭弁論期日においてした右自白の撤回は認められるべきである。

(三) 右自白が真実に反し錯誤に出たものであることは、原審で主張した事情のほか、次の各事実からも明らかである。

(1) 控訴人浪江本人の当審での供述によれば、同人が納富弁護士から事情聴取を受けたのは昭和五八年一〇月四日であること、また、控訴人杉本は同弁護士から何ら事情聴取を受けていないことが明らかである。

納富弁護士は、控訴人らからでも訴外太田からでもなく、担当係長から事情を聞いただけで右自白をしたものである。

(2) 控訴人らは、その後、納富弁護士に対し、本件工事の施行決定書につき決裁して請負契約をさせた旨説明したのであり、本訴に先立つ住民監査請求手続でも、同様の説明をしてきた。

(3) 本件については、本訴前に、控訴人ら及び訴外太田に対し森林法違反の容疑で立件されたが、昭和五八年三月二四日、不起訴処分となった。その過程での取調べにおいて、控訴人らだけでなく訴外太田も、本件工事の着工の指示は訴外太田が担当課長として行った旨供述していた。

(4) なお、昭和五六年一〇月九日に本件工事を中止するに際して、訴外太田が控訴人浪江に相談したのは、大津市〓川学区自治連合会会長外から工事中止の申入があり、これに対し、一旦始めた工事を一時中止するという異例の措置をとるにあたり上司に相談したにすぎず、着工命令が同訴外人の専決であることを左右するものではない。

(四) なお、原判決は、控訴人らを含む京都市建設局職員らは、保安林指定解除告示前に本件工事を着工させることを前提として工事施行の決定、決裁をしたと認定、判示するが、そのような事実はない。

仮に、契約工事期限の昭和五七年三月三一日までに工事を完成することが困難であるとしても、その期限を延長するこ

とも可能なのであるから、この点は、原判決の如き認定の理由とはならない。

2  保安林解除のないことを知っていたか否かに関する自白の撤回について

(一) 原審においては、本件工事着工当時、控訴人らが本件土地に係る保安林の解除処分のないことを知っていたとの被控訴人ら主張事実を認めたが、これも真実に反しかつ錯誤に出た自白であるから、当審において、右自白を撤回し、右の点に関する被控訴人らの主張は否認する。

(二) 控訴人浪江においては、昭和五六年一〇月九日に本件工事を中止させるにあたって、訴外太田から相談を受けてはじめて本件工事の着工を知ったものであるし、控訴人杉本においては、雑談の中で訴外太田から本件工事の着工を聞いた程度のことで、森林法三四条一項の範囲内で許可を得て工事をしているという認識であって、いずれも、保安林解除のされていないことは知らなかった。

(三) 右の点に関する原審での自白も、前記1の自白と同様、納富弁護士が控訴人らからの事情聴取に基づかずに錯誤によりなしたものである。

3  控訴人らに故意、重過失が存在しないことについて

(一) 控訴人らは、本件工事施行決定書を決裁したが、その後の着工については、保安林解除が得られているかどうかなどの諸条件の整備を含めて、訴外太田の専決事項として、同人に委ねられたものである。

(二) 具体的な着工の事実については、控訴人浪江には報告がなく、控訴人杉本は雑談の中で訴外太田から聞いた程度である。控訴人杉本は、訴外太田から何ら問題点の所在について報告がないので、問題なく進行していると判断し、この時は何ら指示等はしていないが、これより前の保安林解除申請前から、同訴外人に対し、監督官庁や林野庁と事前に十分協議するよう指示している。

(三) したがって、控訴人らは、訴外太田に対する監督義務を怠っていない。

(四) なお、仮に、本件工事着工が控訴人らの指示によるものであると認定されるとしても、控訴人らには、故意、重過失はない。

その理由は、原審で主張した(原判決が五枚目裏一〇行目から六枚目表六行目までに摘示する)とおりであるが、本件土地の保安林指定解除の見通しが確実視されていた事情として、右原審主張のほかに、(1)後記4のとおり本件土地について立木の皆伐許可があったこと、及び(2)本件土地について昭和五六年四月に、農林水産大臣が保安林解除に異存がない旨の意向を京都府知事に伝えていたことが挙げられる。

4  原判決摘示請求原因二記載の植栽工事(以下「本件植栽工事」という。)は、本件工事以前に適法に行われた伐採

工事の結果、京都市が義務づけられたものであり、それ自体には違法性はないし、また、その工事費用が本件工事によ

る損害となることはない。すなわち、

(一)(1) 京都市は、立木所有者の代理人として、昭和五六年二月二五日付で京都林務事務所長に対し、左京区大原小出石町一〇九五番地外の保安林内の立木につき、伐採の方法を主伐皆伐として伐採許可申請をしたところ、同事務所長は同年三月三一日、右伐採を許可する旨決定し、京都市に通知した。

(2) 京都市は、同様に、同年六月二七日で同町一一一三番地外の保安林内の立木につき伐採許可申請をしたところ、同年七月二三日その許可決定があった。

(3) 右(1)、(2)により、本件の計画道路区域及びその工事影響区域(山側二メートル、谷側三メートルを標準とする区域)について、立木伐採の許可がなされた。

(4) そして、右各許可に基づき、当時の立木所有者が、同年八月末ころまでの間に、適法に右立木の伐採工事を完了した。

(二) また、京都市は、同年八月二八日付で右事務所長に対し、同町一〇九二番地の一外の保安林につき、土地の形質変更許可申請をしたところ、同事務所長は同年九月二日、右土地の形質変更を許可する旨決定し、京都市に通知した。

右は工事影響区域に関するものである。

(三) その後、計画道路区域及び工事影響区域につき、一部形質変更を含む本件工事がなされたのであるが、安曇川流域住民からの中止要望書が提出されるに及んで、京都市は同年一〇月九日右工事を一時中止した。

(四) ところで、保安林の解除申請は、解除を必要とする全体を一括にするのではなく、林野庁から、単年度の工事に必要な範囲だけを申請するようにと指導されているが、本件については、右のように工事を中止したので、解除申請にかかる区域の工事が同年度中にはできないこととなったため、京都市は、翌五七年二月二三日、右解除申請を取下げることとした。

(五) そして、同二月二三日から三月三日までの間、本件植栽工事がなされた。

(六) 右のとおり、本件土地の立木伐採行為は、本件工事以前にその立木所有者により適法にされたものである。しかして、森林法三四条の二の定めにより、保安林内の立木が伐採された場合は、それが適法にされたか否かを問わず、森林所有者らに植栽義務が課せられている。

(七) 本件の計画道路区域の土地は、京都市が順次買収してきており、したがって、京都市は、その所有者として、右(六)に述べた植栽義務を負担することとなった。

また、前記工事影響区域については、京都市は、これを土地所有者から賃借しており、同じく所有者ら(借地人)として、右植栽義務を負担することとなった。

(八) ところで、京都市が右計画道路区域を買収した当時は、当該区域について保安林解除申請がされており、その解除がされれば保安林としての植栽は必要とされない状況下にあったため、直ちに植栽するということはなかったのであるが、その後、前記のとおり右解除申請が取下げられたため、右植栽義務を履行すべきこととなった。そこで、京都市は右義務の履行、その範囲内の工事として、森林法施行令所定の植栽工事(本件植栽工事)を行ったものである。

(九) したがって、本件違法工事がなかったとしても、京都市としては、当然、右の植栽工事をしなければならなかったものである。

(一〇) してみれば、右植栽工事によって損害が発生したとはいえない。

二  被控訴人らの当審での主張

1  控訴人らの当審での主張はすべて争う。

2  控訴人らの主張1項について

(一) 原判決摘示請求原因三の事実に関する控訴人らの自白は、真実に反するものでも、錯誤に基づくものでもなく、その撤回は許されない。その理由は次のとおりである。

(1) 控訴人らの原審での主張(原判決五枚目表七行目の「被告ら」から同九行目の「ことにある。」までの摘示)及び証人太田武之の証言によれば、訴外太田は当初の段階では納富弁護士から事情聴取を受けていないと解される。したがって、原判決の認定したとおり、納富弁護士は控訴人ら本人から聴取したところに基づいて右自白をしたものというべきであり、これに反する控訴人浪江本人の当審供述は信用できない。

(2) 本訴に先立つ住民監査請求手続においても、故意、重過失の有無のみが問題となっており、控訴人らが本件工事を着工させたことは当然の前提とされていたのであって、控訴人らや訴外太田も右手続では、右に沿う供述をしていたことが明らかである。

(3) 控訴人らは、原審第一回口頭弁論期日に陳述した答弁書だけでなく、昭和五七年一二月七日付、同月二二日付、同五八年五月一三日付の各書面において、右自白を維持することを前提とした主張をしているが、本件に最も精通している控訴人ら本人からの事情聴取なしに、右のような主張をすることは不可能である。

(二) 本件工事につき、訴外太田が着工命令を出した事実はありえない。その理由は次のとおりである。

(1) 本件工事施行決定書には工事の始期として「着工命令の日から」とは記載されていない。

(2) 着工命令が課長の専決事項としてなされたのであればその決定書が作成されたはずであるのに、これは存在しな

い。

(3) 本件工事を請負い施工した横田建設株式会社は、契約締結の翌日から直ちに工事の準備に入り、昭和五六年九月一一日には現地で雑木の整理をしている。

(4) 関係書類の整った同年九月一二日には「下記のとおり工事に着手致しますのでお届けします」という日付空白の着工届が係長から提出され、太田は「これで結構です」と述べている。

(5) また、局長等専決規程によれば、工事の一時中止は課長の専決事項としてできるにもかかわらず、訴外太田は上司たる控訴人らに相談している。このことは、まさにその着工が控訴人らの決裁によるものであることを示している。

(6) なお、契約後の事情変更によって工期が延長されることはあっても、契約当初からその延長を見越して工期を定めることはありえないし、翌年度(四月一日)以降への工期延長は会計年度独立の原則から許されない。したがって、本件では、昭和五七年三月三一日までに本件工事を完了しなければならず、そのため、控訴人らは、保安林解除前に着工させることを前提として工事施行の決裁をしたものである。

3  控訴人らの主張2項について

控訴人浪江本人は、原審で、「昭和五六年六月一六日に(局長に)就任した時、太田課長から保安林解除の申請中だということは聞いていた」と供述しており、また、控訴人杉本本人も、「六月一日に保安林解除申請を出した時に知っていた」と供述している。

しかるに、控訴人らは、右申請の結果について何ら確かめることなく本件工事施行決定書を決裁したのであるから、保安林解除のないことを知って右決裁をしたことは明らかである。

4  控訴人らの主張4項について

(一) 控訴人らの主張4項(一)記載の立木伐採許可のあった範囲は、本件保安林解除申請地の一部でしかない。

(二) 本件保安林の解除申請は、単年度の工事に必要な範囲に止まるものではなかった。したがって、その取下げが年度内工事不能を理由とするとの控訴人らの主張は事実に反する。

本件保安林解除申請の取下げは、本件違法工事が発覚したため、国の指導により行われたものである。

(三) 本件植栽工事は、森林法三四条の二に従ってなされたものではなく、本件違法工事の原状回復措置として行われたものである。そのことは、次の諸点から明らかである。

(1) 本訴に先立つ住民監査請求に基づく監査結果には「昭和五七年二月二三日から同年三月三日までの間、杉苗の植栽及び種子吹付けの復元緑化措置がなされていた」、「復元緑化措置については監督官庁からの行政指導を受け、原状復旧のための植栽工事を行わせたことも明らかである」と記載されている。

(2) 控訴人らも、原審においては、「違反事実については、林務事務所長と協議の上、復元作業にかかり、杉苗の植栽及び種子吹付をし、三月三日頃までに復元緑化措置を完了した」(昭和五七年一二月一七日の原審第二回口頭弁論期日に陳述した同月七日付準備書面)、とか「京都市は林務事務所長や大島課長の指導を了承し、原状回復措置をとったということである」(昭和五九年四月二六日の原審第一〇回口頭弁論期日に陳述した同月一一日付準備書面)と主張し、本件植栽工事が本件違法工事の原状回復措置として行われたことを認めていた。

(3) 京都府京都林務事務所長は、昭和五六年一〇月二九日、京都市(建設局建設企画室長の控訴人杉本)に対し、本件工事の原状回復措置を指導した。その内容は、洗面吹付工、植栽、客土搬入、種子吹付、舗装取毀である。右事務所長の回答では、右指導の法的根拠はないとのことである。

(4) 昭和五七年八月一〇日の衆議院環境委員会において、小澤普照林野庁指導部治山課長は「京都府知事より、その違反行為を発見した際に、すぐに京都市に対し……復旧あるいは植栽を行わせている」、「植栽その他の復旧的な行為でございますけれども、復旧工事を行っているという報告を受けております」と答弁している。

(5) なお、同年四月二六日付朝日新聞は、京都市は京都府の原状回復命令で問題の道路上に杉の苗木を植えた、その経費は市の道路建設費から支出されたというと報じている。

(四) したがって、本件植栽工事に要した費用は、本来支出する必要のない金銭であるのに本件違法工事によりその支出を余儀なくされたものであるから、本件違法工事と相当因果関係のある損害であり、ひいては、控訴人らの違法な財産管理行為(請求原因三記載の行為)と相当因果関係のある損害である。

第三  証拠関係(省略)

理由

一  当裁判所も、被控訴人らの本訴請求は正当として認容すべきものと判断する。その理由は、次のとおり補正、付加するほかは、原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決八枚目裏七行目の冒頭から同八行目の「いなかったこと」までを「、本件土地が保安林であって予てその解除申請がされていたこと」と改め、同一〇行目の「右違法工事の原状回復措置として、」を削除し、同末行の「植栽し」の次に「(本件植栽工事)」を加える。

2  原判決九枚目表九行目の「第一回」及び同一〇行目の「第七回」の前にそれぞれ「原審」を加える。

3  原判決九枚目裏一行目の「証言」の次に「(第一、二回)」を、同行の結果」の次に「(控訴人浪江本人については原審及び当審)」をそれぞれ加え、同二行目の「部分がある。」を「部分があり、」と改め、その次に「成立に争いのない甲第四号証の五、第二〇、二六号証、当審での控訴人浪江本人尋問の結果によれば、控訴人らは、昭和五六年一二月二三日、本件工事に関し森林法違反の容疑で告発を受け、昭和五七年末ころに検察官から取調べを受けたが、その際、控訴人らは、検察官に対し、本件工事の着手を命ずることは訴外太田の専決事項である旨供述したこと、及び検察官は右告発事件につき控訴人らを不起訴処分としたが、その理由の一つとして、京都市の規則、規程上、工事の着手の指示、命令は工事担当課長が専決し、責任を負うことになっていることを掲げていることが認められる。」を、同三行目の「ことができず、」の次に「右不起訴の事実及び」をそれぞれ加え、同五行目冒頭の「かと」を削除する。

4  原判決九枚目裏九行目の次に、左の説示を加える。

「しかも、本件の訴状では、請求原因の第二として、『被告らの違法な財産管理行為』との表題で、控訴人らが『相謀って……横田建設株式会社、千原組に指示して』本件工事をさせた旨明確に主張、記載されていたのであるから、控訴人らとしては、自らの工事指示行為が責任追求の対象とされていることは容易に理解しえたはずである(控訴人浪江本人も、当審で、右の点を認識、理解したことを前提として供述している。)。したがって、本件訴訟を提起された控訴人らとしては、その工事指示行為の存在を認めるのか争うのかは、応訴方針を決するにあたって、最優先的判断事項の一つであることは自明であって、訴訟追行を原審代理人に委任するにあたり、この点に関する自らの認識、意向を、直接の面談によるか否かは別として、原審代理人に伝達、説明しなかったとは到底考えられないところである。」

5  原判決九枚目裏一〇行目の「訴訟代理人弁護士」を「控訴人らの原審訴訟代理人納富弁護士」と改める。

6  原判決一〇枚目表二行目の「聞いて、」の次に「或いは直接聞かなくても、間接的に本人の意向、認識を問い合わせ」を、同三行目の「供述」の次に「、説明するところ」を、同四行目の末尾に「の原審」を、同八行目の「被告らの」の次に「原審」を、同行の「対する」の次に「直接又は間接の」をそれぞれ加える。

7  原判決一〇枚目表九行目の次に、左の説示を加える。

「控訴人浪江本人(当審)は、右認定、判断に反して、昭和五八年一〇月四日までは、原審代理人から全く事情聴取を受けず、自らも説明もしていない。控訴人杉本も同様である旨供述するけれども、この供述は、右に説示してきたところに照らして採用しがたい。のみならず、同本人の供述するところによれば、本件の訴状中に前記のような記載があることについて、控訴人両名が不満を表明していることは、建設局の職員一同が知悉していたということであるのに、少くとも控訴人らの下僚たる担当係長から事情聴取をし、期日毎に連絡を取っていた原審代理人にはそのことが通じておらず、正反対の趣旨の答弁(自白)がされ、これが一年余にわたって維持されたことになり、余りに不自然といわざるをえない。」

8  原判決一〇枚目裏一行目の「成立に争いのない甲第四号証の四、五」を「前掲甲第四号証の五、第二〇、二六号証、成立に争いのない甲第四号証の四、控訴人浪江本人尋問の結果(当審)」と改め、同三行目の「個人が」の次に「、しかも控訴人ら両名のみが、工事業者に本件工事を指揮、命令したとして、」を、同七行目の「被告ら」の次に「の原審」を、同末行の「被告ら」の次に「(控訴人浪江については原審及び当審)」をそれぞれ加える。

9  原判決一一枚目表五行目、六行目、九行目及び一〇行目の各「代理人」をいずれも「原審代理人」と改める。

10  原判決一一枚目裏三行目、六行目(二個所)の各「代理人」をいずれも「原審代理人」と、同四行目の「れるところ」を「しめるところ」とそれぞれ改め、同六行目の「事情を」の次に「直接又は間接に」を加える。

11  原判決一二枚目表二行目、八行目及び八行目から九行目にかけての各「代理人」をいずれも「原審代理人」と改め、同六行目の「証言」の次に「(第二回)」を、同八行目の「認められる」の次に「(これに反する控訴人浪江本人の当審供述は採用しない。)」を、同九行目の「事情を」の次に「、主として」を、同行の「本人から」の次に「直接又は間接に」をそれぞれ加える。

12  原判決一二枚目裏三行目の「証言」の次に「(第一回)」を加え、同行の次に、左の説示を加える。

「加えて、右の間、第一回口頭弁論期日に陳述した答弁書や右4で掲記した昭和五七年一二月一七日の第二回口頭弁論期日陳述の準備書面のほか、同五八年二月一八日の第三回期日陳述の釈明書、同年六月一〇日の第五回期日陳述の準備書面においても、右自白を維持することを前提とした主張をしている。そして、控訴人浪江本人尋問の結果(当審)によれば、控訴人らは、右の答弁書以下の各書面が作成されたころこれに目を通していること及び控訴人らの下僚は原審の口頭弁論期日毎に訴訟の進行の概況を控訴人らに報告していたことが認められるのに、前記自白を撤回するころまで、控訴人らが原審代理人の作成した前記各書面の記載に異議、不満を申し出たことを窺わせる証拠はない。」

13  原判決一二枚目裏一〇行目の次に、改行のうえ、左の説示を加え、同末行冒頭の「7」を「8」と改める。

「7 前掲甲第七号証及び控訴人浪江本人尋問の結果(原審及び当審)によれば、本訴に先立つ住民監査請求も、控訴人ら個人の責任を追求するものであったが、控訴人らは、右手続での事情聴取に際しては、敢えて控訴人らが本件工事をさせたものではないとの説明はしていないと認められ、控訴人杉本本人の供述中これに反する部分は採用できない。」

14  原判決一三枚目表九行目の「又は」を「もしくは」と改める。

15  原判決一三枚目裏五行目の「解される」の次に「し、控訴人浪江本人尋問の結果(当審)によれば、控訴人ら及び訴外太田は右のような情勢を把握していたものと認められる」を、同六行目の「本件工事」の次に「を保安林解除前に施工すること」をそれぞれ加える。

16  原判決一四枚目表一行目の「証言」の次に「(第一、二回)」を、同二行目の「結果」の次に「(控訴人浪江本人は原審及び当審)」を、同七行目の「二四号証」の次に「、三六号証のIないし四」をそれぞれ加える。

17  原判決一四枚目裏二行目の「証言」の次に「(第一、二回)」を、同三行目の「結果」の次に「(控訴人浪江本人は原審及び当審)」をそれぞれ加える。

18  原判決一五枚目表一行目の「によって」の次に「立案」を、同七行目の「通知」の次に「(回答)」をそれぞれ加える。

19  原判決一六枚目表七行目の「含む土地」の次に「(計画道路区域及び工事影響区域)」を、同八行目の「許可をうけ、」の次に「同年八月末ころまでにその伐採を完了し、」をそれぞれ加える。

20  原判決一七枚目表一行目の末尾に「控訴人浪江本人(原審)は、右決裁のころ前記保安林解除申請の結果について何ら確かめていない旨を、また、控訴人杉本本人は、右決裁、要求のころ右解除手続の完了していないことを知悉していた旨それぞれ自認供述している。そして、その後も、本件工事を中止する事態となるまで、控訴人らは右解除申請の結果について何ら確認していない。」を加える。

21  原判決一七枚目裏一行目冒頭の「のこと」の次に「及び前記7の事実」を、同六行目の末尾に「(控訴人らの当審主張1の(四)ではこの認定は左右されない。)」をそれぞれ加え、同八行目の「〓川」を「安曇川」と改める。

22  原判決一八枚目表三行目の「〓川」を「安曇川」と、同七行目の「京都市庁建設局」を「京都市建設局」とそれぞれ改める。

23  原判決一九枚目表二行目の「横田建設株式会社」の次に「から『下記のとおり工事に着手しますのでお届けします』という記載の日付空白の着工届その他関係書類が提出された際、口頭で、同会社」を、同三行目の「伝えた」の次に「が、現実には、前記11のとおり、既に雑木の整理等が開始されていた」をそれぞれ加える。

24  原判決二一枚目裏九行目の次に、改行のうえ、左の説示を加える。

「請求原因四の事実中、控訴人らが本件工事をさせた当時未だ本件土地の保安林指定解除がされていないことを知っていたとの点については、控訴人らは原審においてはこれを認めていたが、当審において右自白を撤回し、否認するに至った。

そこで、この点につき検討するに、次の(一)ないし(四)の諸点を合わせ考えると、控訴人らは、本件工事をさせた当時、未だ本件土地の保安林指定が解除されていないことを知っていたものと認めるのが相当であり、控訴人浪江本人尋問の結果(当審)中これに反する部分は採用しがたく、他にこの認定を覆すに足りる証拠はない。

(一)  前記四の4、5、7及び8で認定した各事実。

(二)  前記三で認定、判断したのと同様に、(1)控訴人らが保安林指定の未解除であることを知っていたか否かは、その故意、重過失の有無を決する中核的な一要素として本訴における重要な事実の一つであり、(2)それは、控訴人ら自身の認識の問題であるから、控訴人らはこれにつき最もよく知っている立場にあり、且つ、前記認定の告発の事情に鑑み、その記憶を保持していたはずであるところ、(3)本件の訴状では、『控訴人らは、解除手続が完了しない間に本件工事を指示、開始させたのであって、この事実を知悉していた』と明確に記載されていたのであるから、控訴人らとしては、右の点の認識のあったことが自らの責任成立の一根拠として主張されていることは容易に理解しえたはずである。したがって、本訴に応訴するにあたり、控訴人らとしては、この点に関する自らの認識、意向を原審訴訟代理人に(直接又は間接に)伝達、説明しなかったとは考えられないし、原審代理人が、答弁、主張を提出するにあたり、右の点に関する控訴人ら本人の説明の入手、検討を怠ったものとも考え難い。

しかるに、控訴人ら(原審訴訟代理人)は、原審第一回口頭弁論期日で陳述した答弁書により、訴状における前記主張を認める旨答弁し、同五八年六月一〇日の第五回期日陳述の準備書面でも同様の主張をし、その後、前記の如く工事指示の有無についての自白を撤回した後も、右の点に関する自白を撤回することなく推移した。この間、前記三と同様、控訴人らは答弁書、準備書面に目を通し、訴訟進行の概況について報告を受け、更に、各本人尋問も受けたのに、前記の如く自白していることにつき異議、不満を申し出た形跡は見当らない。そして、当審に至ってはじめて、右の自白を撤回し、前記の点につき認識のあったことを否認したものである。

(三)  控訴人らは、右(二)の如く主張を撤回、変更した原因につき、原審代理人が控訴人らからの事情聴取に基づかずに答弁したためであると主張するのみで、その余には合理的な説明を提出しない。控訴人らの提出する理由が採用に値しないことは右(二)及び前記三記載のとおりであるうえ、その理由では、原審の最終段階まで右自白を撤回しなかったことの説明にはならない。

(四)  控訴人ら自身、当審においても『森林法三四条一項の範囲内で許可をもらって工事しているという認識』であったと主張する(控訴人杉本本人は、原審でこれに沿う供述をしている。)が、森林法三四条の許可は保安林であること(換言すればその解除がされていないこと)を前提としてなされるものであることは条文上明らかであるから、右主張は、却って、保安林指定が未解除である事実を知っていたことを、自ら肯定する意味をもつ。」

25  原判決二二枚目表一行目の「、そのため」から同二行目の「支出をさせ」までを削除し、同九行目の「いること、」の次に「(五) 本件土地について昭和五六年四月に農林水産大臣が保安林解除に異存がない旨の意向を京都府知事に伝えていたこと、(六)したがって、当時、保安林指定解除の見通しが確実視されていたこと、」を、同末行の「(四)」の次に「、(五)」をそれぞれ加える。

26  原判決二二枚目裏七行目の「(四)」の次に「、(五)」を加える。

27  原判決二三枚目裏一行目の「ものではない。」の次に、左の説示を加える。

「また、右(四)、(五)の事情により保安林指定解除の見通しが確実視されていたものとしても、そのことをもっては、その解除前に森林法に抵触する本件のような工事を行うことの違法性が減殺されるものでないことは論ずるまでもないところであり、仮に、控訴人らが、かかる情勢下にあれば、保安林解除前の工事も許されると解して本件工事を指示したものとすれば、それは森林法の定める要件、手続を無視するもので、これまた、公務員としてのあるべき姿勢にもとる、重大な過失ある行動といわざるをえない。」

28  原判決二三枚目裏五行目の次に、改行のうえ、左の説示を加える。

「六 損害

1  京都市が本件植栽工事を行い、その費用として七〇万九四〇〇円を支出したことは前記のとおりであるところ、控訴人らは、原審においては、右植栽工事は本件違法工事の原状回復措置として行われたものであること、及び、京都市は本件違法工事により右費用相当額の損害を被ったことを認めていたが、当審において、右自白を撤回し、否認するに至った(右の点に関する控訴人らの当審主張が自白の撤回に当ることは、原判決の事実摘示((請求原因二に対する認否))と控訴人らの当審主張4項とを対比すれば明らかである。)。

2  そこで、この点について検討するに、次の(一)ないし(五)の諸点を総合すると、本件植栽工事は本件違法工事の原状回復措置として行われたものであり、したがって、京都市は、本件違法工事により右植栽工事費用相当の七〇万九四〇〇円の損害を被ったものであると認めるのが相当である。

(一)  前掲甲第七号証によれば、被控訴人らの当審主張4項(三)(1)の事実が認められる。

(二)  前掲甲第九号証(京都府京都林務事務所に対する調査嘱託の回答書)によれば、同主張(3)の事実が認められる。

(三)  成立に争いのない甲第六号証によれば、同主張(4)の事実が認められる。

(四)  前掲甲第四号証の三によれば、同主張(5)の事実が認められる。

(五)  控訴人らは、原審においては、第一回口頭弁論期日において、右の点に関する被控訴人らの主張を認めたほか、第二回期日陳述の準備書面では、「違反事実については、林務事務所長と協議の上、復元作業にかかり、杉苗の植栽及び種子の吹付をし、三月三日までに復元緑化措置を完了した」と、また、第一〇回期日陳述の準備書面では、「京都市は林務事務所長や大島課長の指導を了承し、原状回復措置をとった」と積極的に主張し、本件植栽工事が本件違法工事の原状回復措置として行われたことを認めていた。

しかるに、控訴人らは、当審に至って、右自白を撤回したが、次の3で排斥する主張以外には、右の如く主張を撤回、変更した原因につき何ら合理的説明を提出しない。

3  控訴人らは、この点につき、当審主張4項のとおり主張する。

なるほど、同主張(一)、(二)記載のとおり立木伐採の許可があり、立木の伐採がなされたことは前記認定のとおりであるけれども、本件土地については右を越えて、土砂を削り、ならすなどして道路状の形状に変更する本件違法工事がなされたことは前記のとおりであるし、現実になされた本件植栽工事は、右本件違法工事によって侵害された原状を回復する目的で行われ、関係各当局もそのようなものとして了解していることは右2で認定したとおりであるのに対し、本件植栽工事が控訴人ら主張の伐採に伴う植栽義務の履行として、その範囲内でなされたことを支持する証拠は、控訴人浪江本人の当審での供述しか提出されていない。してみれば、森林法上、一般に控訴人ら主張のような植栽義務が課せられていることをもっては、本件植栽工事が本件違法工事の原状回復措置であることは左右されず、控訴人浪江本人の右供述は採用できない。

そして、他に、以上の認定を覆すに足りる証拠はない。」

29 原判決二三枚目裏六行目冒頭の「六」を「七」と改める。

二  そうすると、被控訴人らの請求を認容した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからいずれも棄却し、控訴費用の負担につき民訴法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

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